明るい星ほど収差が目立つことを割り引いても左上の収差が大きいです。このように四隅の間でバランスが取れていない、つまりスケアリングに不良がある個体ということになります。もちろん一般撮影では気になるレベルではなく不良品というほどではないですし、タムロンに限らず他の会社のレンズでもよく見られるものです。
以前にSamyang 12mm フィッシュアイレンズでも同じような症状がありスケアリング調整をしたことがあるので、このタムロンレンズでも調整することにしました。
まずリア側にあるマウント金具を取り外します。しかしSamyangのレンズとは違ってこのレンズは電子接点を持っており、その部分にはレンズ内部からケーブルがつながっているため簡単には取り外せません。
横についているネジをいくつか外して電子接点が取り付けられている黒い部品を外すことが必要だと思うのですが、それも大変そうだったのでこのままでマウント金具を外すことにしました。マウントを止めているネジ4本をはずします。
マウントを注意深く少し持ち上げて様子を見ると、電子接点でフレキケーブルが接続されている箇所はほとんど持ち上げることはできないもののそこを中心にしてずらすことができました。これで調整可能になります。
画像において左上の収差が大きいということはセンサー面においては右下になります。レンズのボディへの取り付け位置から、下の写真で赤い星マークを付けたあたりが収差が大きいことがわかりました。本来スケアリングというのはレンズの光軸だけではなくレンズの加工誤差、偏心などがいろいろと複雑に絡み合っているとは思うのですが、ここでは簡易的に光軸で調整することを考えます。
光軸中心となる黄色のマークを線の向きで赤い星マークに向けて少し傾ければ、そちら側での収差は良い方向に行くはずです。そのかわり反対側では収差は悪化しますが、そのバランスをとるのが目的になります。そのためには、マウントが基準面ですので、赤い星マークの辺りのマウント裏側にスペーサーを貼ればその意図通りに光軸が傾くことが期待できます。経験的には0.1mm厚程度のものを入れれば状況は変化します。Samyangレンズのときはねじ止め部にワッシャーを挟み込みましたが、今回は0.1mm厚のアルミテープをカットして貼ることにしました。
どこにどれだけの厚みを貼るかは実際の画像をチェックしながらになります。まずは何もしない状態での画像です。遠くにある鉄塔を画像中心と、位置をずらしてそれぞれの四隅にいれてピクセル等倍で比較しました。右下が一番くっきりしていて左上が一番悪いですね。順序をつけるとしたら良い順に右下 -> 左下 -> 右上 -> 左上でしょうか。おおむね星の画像での結果と一致しているのでこのチェック方法で大丈夫そうです。
ちなみにソフトフィルターは貼り付けたままです。ないほうが比較しやすいかと思いますが、外したりつけたりが大変なのでそこまではしませんでした。
ここからアルミテープを貼りながら調整しました。結果としては、0.2mm厚(アルミテープ2枚)を2か所、0.1mm厚(アルミテープ1枚)を1か所に貼りました。完全には解消できておらず左上が一番悪い感じはまだ残っていますが、四隅それぞれの差というのは小さくなったように見えます。一番くっきりと見えていた右下は悪化していますがこれはバランスをとるための調整なので仕方がないですね。
この状態で夜に実際の星にてチェックしました。シリウスを中央と四隅それぞれに入れています。こちらもピクセル等倍で切り出しています。本当は星像でも調整前後での比較をした方が良いと思いますが、今回は調整を昼間にやってしまったので、調整後だけの画像になります。
ピント位置は隅にシリウスを入れてそれが最小になる位置としました。中心部はすこしピントが甘くなっているかもしれません。これを見るとまだ右下が一番くっきりしていて、左上が一番ぼやっと大きくなってはいますが、四隅を比べてそれほど違いは気になりませんね。もっとも明るい恒星のシリウスでこれぐらいなので実際の撮影では大丈夫なのではないかと期待しています。
上の画像は絞り開放のF2.8ですが、1段絞ったF4でどうなるかも見てみました。結論からするとほとんど変わらないですね。ぼやっとしていたところがくっきりと、そして少し収差が減ってはいますが。以前に追尾撮影で星像チェックをした時にもF5.6まで絞り込まないと改善は見えてきませんでした。ですのでこれぐらいなら開放で使った方がいいかと思っています。
縦構図で星空を撮影すると左上のコーナーというのは地上になることが多いので、コマ収差が出ていても問題ないのですが、横構図での撮影となるとそうもいかず以前に夏の天の川を横構図で撮影したときに気になっていた箇所です。今回の調整で改善が期待できそうなので、次の星空撮影の機会に結果を確認したいと思います。
調整の際にレンズリアのマウント金具を外していますが当然ながらメーカー保証外の行為になりますし、電子接点があるレンズの場合にはこのタムロンのレンズよりもっと複雑な構造をしていて、金具を外すだけで修復が大変な状態になってしまうこともあるようです。このレンズも注意深く作業をしないと簡単にフレキケーブルにダメージを与えてしまうと思います。このあたりのリスクをどう考えるかですね。
Author:TK_Starlight
綺麗な眺めに魅かれて星空・風景・花などの写真を撮っています。
コメント
2021/01/12 URL 編集
DIYで
2021/01/12 URL 編集
スケアリング調整
私も以前はサムヤンのレンズがあまりにも酷かったので、同じように何本も調整していました。
現在、キャノン用のタムロンの15-30mmF2.8を持っていますが、同じように僅かにスケアリングエラーがあります。
でも、星景にしか使わないので見て見ぬふりをしています。
そういえばシグマの135mmF1.8Atも少し狂っている感じですが、どうしようかなあ・・・横着者orz。
2021/01/13 URL 編集
完璧とまでは。。
Samyangはやはりスケアリングが今一つの個体が多いようですね。電子接点がなくてお安いレンズなら気軽に挑戦できますが。シグマの135mm F1.8 Artまでいくと調整もシビアで大変そうです。
2021/01/13 URL 編集
私の専門である機械の分野ですと、アルミ箔を挟んで調節することがありますね。大体厚さが10ミクロンぐらいですので微調整がやりやすく、樹脂などを含まないので変質の心配も無いので。
この方法ですと、あえてマウントアダプターを使用するレンズを選んで、マウントアダプターのマウント面を調整する方法もありそうですね。安いアダプターならそのレンズ専用にできるし、失敗した際のダメージも抑えられそう。
2021/01/13 URL 編集
マウントアダプター
2021/01/14 URL 編集