普段は安定性・自動導入といったメリットのあるEQ6PRO赤道儀を使用していますが、サブの機材としてAP赤道儀も所有しています。併せて使用する光学系はコーワ プロミナー 500mm F5.6LでマウントアダプターTX07Tと組み合わせて350mm F4としています。
ベテランの間ではあの価格で自動導入ができないなんて、といった評価もありますが、私がAP赤道儀を選んだ理由は以下の通りです。
オートガイダーはPC上のPHD2によるオートガイドです。
PCを使うならディープサイクルバッテリーなどの大型電源を用意しないといけないと思われる方は多いかもしれませんが必ずしもそうではないです。私はこのAP赤道儀のセットのときにはPCも含めて機材一式をモバイルバッテリーで運用できるようにしています。
最近のPCは低消費電力化が進んでいるので上手に活用すれば内蔵バッテリーやモバイルバッテリーで十分に一晩運用可能です。私の構成ではPCの消費電力は5 - 6W (ワット)程度になります。PCよりは高速導入に対応した自動導入赤道儀の方が消費電力はずっと多いです。例えば私の使っているEQ6PROだと12Vで2A消費しますから 12V x 2A = 24Wということになります。PC 4台分に相当することになります。
電源が必要になるのは以下の機器です。おおよその消費電力も書いておきました。
PCはUSB Type Cから供給しています。それ以外のものはUSB Aポート(通常のUSBポート)から供給するようにしてあります。これらの消費電力の合計が13Wですから、8時間の使用とすれば 13W x 8時間(hour) = 104Whのバッテリーがあれば賄えることになります。実際には電圧変換の効率であったり、バッテリーの使用に伴うヘタリといったものがあるのでもっと余裕は必要です。一般的に販売されているモバイルバッテリーで容量の大きいものは26800mAhでほぼ98Whに相当するので、これ一つではやや不足、二つあれば安心ということになります。
現在使用しているモバイルバッテリーは26800mAhのものと20000mAhのもの計2個で、どちらもUSB C PD 45W出力に対応しておりPCに電源供給が可能になっています。USB C PDに対応しているとモバイルバッテリーを充電する際にも、そのポートを使って大容量ACアダプタと組み合わせれば短時間で充電できるのも良い点です。対応していないものに比べると値段は高めとなってしまいますが、どちらにしろモバイルバッテリー選びは定評あるメーカー・ブランドのものにしないとリスクが高く、そのような商品同士で比べるとそれほど大きな差にはならないと思います。
最近は飛行機におけるリチウムバッテリーに対する制限が厳しくなっていて、バッテリー容量が100Whを超えるものは飛行機への持ち込み制限の対象になることがあるので避けました。ちなみにリチウムバッテリーを使用している機器 (PC、スマホ、カメラなど)やモバイルバッテリーは飛行機において預け入れ荷物の中に入れることは禁止されていることが多く、手荷物として機内に持ち込む必要があります。
モバイルバッテリーのUSBポートから天体用機器に電源供給するときに持っていると便利なのが、USBの電源供給を2つに分岐できる二股ケーブルです。(USBハブとは異なりデータ通信の分岐には対応していません。) モバイルバッテリーによっては消費電力が少ない機器だと使われていないと勘違いして電源供給を止めてしまうケースがありますが、そのようなときに例えばAP赤道儀とヒーター1本を組み合わせてモバイルバッテリーの一つのポートに接続すれば、そういったふるまいを防ぐことができます。
私はこちらのケーブルを使っています。
またType Cを使うのは現時点PCだけであるため、モバイルバッテリー側のType Cポートが一つ余ってしまうので、それをUSB Aに変換して有効活用したい場合にはこのようなアダプタが使えます。私が使っているモバイルバッテリーではType C ポートの方は電力の低い機器を使っていても電源が遮断されることがないので、そういった機器はType C ポートから電源を取るという選択肢もあります。
このようにうまく機材を選んで使いこなせれば大きくて重い電源やバッテリーなしでも十分直焦点撮影用機材を運用できます。モバイルバッテリーが比較的入手しやすい価格で色々と販売されているので以前とはずいぶんと状況が変わったと思います。
2019年春にはこれらの機材をニュージーランドに持ち込んで初めての南半球の星空を楽しむことができました。そのときに撮影した大マゼラン星雲です。
Kowa Prominar 500mm F5.6L + マウントアダプター TX07T
EOS 6D SEO-SP4 (UIBAR)
ISO3200 210秒 x4 コンポジット x3 モザイク
Vixen AP赤道儀, PHD2 + Toupcamによるオートガイド
2019年3月ニュージーランド Mt Cock National Parkにて撮影
Adobe Lightroom Classic, Photoshop CC 2019による画像処理
Author:TK_Starlight
綺麗な眺めに魅かれて星空・風景・花などの写真を撮っています。
コメント
初めまして。
私もAP赤道儀を今年になって購入しました。
確かに導入が出来ないのは残念なところですが私はスターブックテンで動かしてるので導入は問題なくできます。
またガイドはアドバンスユニットを使ってるのでPC要らずで快適です。
M-GENでもいいですね。
一番良いのは持ち運びと扱いやすさですね。
バッテリーは小さな12Vポータブルからすべて取ってます。
大きな赤道儀システムも良いけど手軽でいろんな用途で使えるので今後活躍の場が増えてくると思います。
2020/04/07 URL 編集
コンパクトな機材
AP赤道儀を今年から使用されているのですね。おっしゃるとおり、機材がコンパクトだと用途が広がって使える場面が増えると思います。私自身は昨年の海外遠征用機材として揃えましたが、そのあとも手軽に済ませたいなと思うときになど活用しています。Marshallさんのブログも拝見しましたが、アドバンストユニットの使用レポートはあまり目にしなかったので、とても興味深いです。
私の撮影スタイルだとPCをオートガイド以外にも活用しているのでPCは必須なのですが、それでも電源を含めて小型で済むのは助かります。バランスの取れた良い赤道儀と思いますので、これからもいろいろと活用したいものですね。
2020/04/08 URL 編集