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星の色を綺麗に見せる画像処理
2020
/
03
/
14
画像処理
天体画像の仕上がりがよく見えるための一つの要因は、たとえ星雲が主題であっても星が綺麗に処理されていることであると言われます。星の綺麗さとしてその色合いが大切ですので、ここではその処理に使える方法を紹介します。
綺麗な星の色とは
星の色が綺麗に見えるために気を付けるポイントとして2点あると思います。
・ 白い星が白くなっている。赤などの色カブリが起きていない。
・ 適度に青い星、黄色い星が存在する。
赤い星雲を強調したいがためにRチャネルだけを強調すると星までも赤くなってしまうことがあります。このような赤くかぶってしまった星は全体のカラーバランスが崩れているように感じさせ、いわゆる透明感を損ないます。星のカラーがR、G、Bでほぼ同じ値となっているようなカラーバランスが取れていることは大切です。
天体写真の画像では白い星が一番多くなると思っていますが、そのなかに適度に青や黄色の星があると色彩豊かな感じが出てきます。ただし青い星と言っても実際には青白い星であり、デジカメの画像としては星の芯は白でエッジ部分に青く色がついているようになることが多いです。(ダイナミックレンジが広い撮像素子なら星の芯も白飛びせずに青くなるのかなとは思いますが、使用したことがないのでわかりません。) それに対して、黄色の星は芯まで黄色く出ることが多いです。
一方で赤い星というのはかなり数が少ない(あってもオレンジ)ですし、緑の星というのは存在しませんね。ですので星の色を考えるときには青と黄色がポイントになってきます。
彩度とLabモード
Photoshopで色合いや彩度を調整するときによく使うのが色相・彩度コマンドです。私も星雲の色合い調整では頻繁に使用します。しかし星の色を出そうと彩度を上げてもなかなかうまく機能しません。Photoshopのアルゴリズムをきちんと理解しているわけではないのですが、この色相・彩度コマンドはもとからある程度彩度をもっている部分については彩度を高めるといった調節は効きやすいのですが、元画像であまり色がのっていない個所は彩度を上げてもあまり色が出てきません。極端に上げれば出せますが、そうすると元から色が出ていたところについては彩度が上がりすぎることになってしまいます。
このようなときには普段のRGBモードからLabモードに変換すると柔軟な処理が可能になってきます。Labモードでは輝度と色彩が別チャネルになっていて色彩・彩度に対してレベル補正やトーンカーブが可能になるためです。Labモードに変換するには、モードからLabカラーを選択します。
・ Lチャネル: 輝度を表す。
・ aチャネル: 赤(/マゼンタ)と緑を表す。正の値が赤、負の値が緑の彩度。
・ bチャネル: 黄色と青を表す。正の値が黄色、負の値が青の彩度。
aチャネル、bチャネルはそれぞれ正と負で二つの色彩の組み合わせとなっていますが、これらは補色の関係になります。ピクセルのとる値の絶対値が大きいほど彩度が高くなり、0であればどちらの色もついていないことになります。あるピクセルがaチャネル、bチャネルとも両方とも0であればそのピクセルは白(ニュートラルグレー)であることになります。
Labモードでのトーンカーブ・ヒストグラム
実際の画像で星だけを選択した状態でトーンカーブをかけて、L、a、bそれぞれのチャネルのヒストグラムがどのようになっているか見ていきましょう。
まずLチャネルですが、このヒストグラムは比較的見慣れた形だと思います。RGBモードのトーンカーブで色ごとではなくRGBとしてみたときに出てくるトーンカーブと同じです。
次はaチャネルです。通常のRGBモードでのトーンカーブで(128, 128)にあたるグラフの真ん中がここでは(0, 0)になります。それより右側が正の値で赤の彩度(0 - 100)、左側が負の値で緑の彩度(-100 - 0 )です。
このヒストグラムの分布を見ると、原点(0,0)より右側の赤は彩度おおよそ一目盛分、0から20までの間に分布していることになります。左側の緑より右側の赤の方に分布が寄っているので、緑がついている星より、赤い星の方が多くなっていることがわかります。(星だけを選択したマスクを使ってトーンカーブ・ヒストグラムを見ています。)
最後にbチャネルです。aチャネルと同様にグラフの真ん中がここでは(0, 0)になります。bチャネルでは右側が黄色、左側が青になります。
このbチャネルのヒストグラムの分布も右側の方によっているので青い星より黄色の星の方が多くなっていることがわかります。また山の幅がaチャネルより広いですから、青や黄色の星の彩度が赤・緑より高めになっていることになります。
星の色の彩度調整
星の色を綺麗に出すのがこの処理の目的ですが、これには先に書いたように青と黄色が重要です。ということは調整すべきなのはbチャネルということになります。行いたい彩度の調整は
1. 彩度が低いエリア、つまり0に近いところを正負とも絶対値を大きくすることで彩度を上げたい。
2. もとから彩度が高い部分、0から離れた値の大きい箇所は値を変えずに彩度を保ちたい。
というものになります。これを行うためのトーンカーブが例えばこちらです。
カラーバランスを崩さない、つまり白を白に保つために(0, 0)のところに点を打ちます。そのうえでカーブを調整します。このカーブによって、少しだけ黄色、もしくは少しだけ青だった星の彩度が高められる一方で、彩度の高かった部分は変化しないので不自然に彩度を高めた感じというのが起こりません。
ただしこの画像ではちょっと黄色の星が多いようなので、それを減らしてバランスを改善する目的で(0, 0)ではなく (1, 0)に点を打ちました。これによりbチャネルの値が 1ですこし黄色っぽかった星が 値 0となり、白い星となります。山全体が少し左側にシフトします。
このセンターポイントをずらすことは色相を調整することに相当するので弊害も出やすく、行うにしても少しだけの微調整にした方がいいと思います。もし星のカラーバランスが大幅に崩れているのなら、画像全体のカラーバランスが崩れている可能性が高いので、通常のRGBモードでのチャネル別トーンカーブなどで整えるべきです。
ここではbチャネルを扱いましたが、aチャネルで赤に偏っている星色をシフトして(色相を調整して)白とすることもできますが、赤い星雲の中の星など多少は赤がついていた方が自然に見え、それを無理に白に寄せると星雲の中にある星が浮いて見えてしまうという副作用が出ることもあるので、あまりお薦めではないです。
あるいはシャープなカメラレンズを用いた場合偽色が出ることがありますが、その偽色は緑に出ることが多いので (ベイヤー配列のカラーセンサーでは緑のピクセルが多いことと、本来緑の星は存在しないので緑があると不自然に感じる)、aチャネルのマイナス側の彩度を下げることで偽色を低減することができます。
星の色の調整が終わったら、ふたたびモードメニューからRGBカラーに戻って通常の処理を続行します。
まとめ
直焦点撮影では多くの場合が星雲が主題であるため星雲がどう見えるかというところに注目して処理を行います。それでも画像全体の印象では星の色に影響される要因が少なくありません。星の色合いを調整するにはLabモードでの編集が有効で彩度をよりきめ細かく処理することができます。(ただしこの処理には星だけを選択するいわゆる星マスクの作成が必須になりますが、この記事ではその説明は行っていません。)
星の色の処理以外でも、輝度の低いエリアはカラーノイズが出やすいのですが、カラーノイズを抑えながらコントラストをつけるにはLabモードでLチャネルを処理するのも有効な手段となります。このように普段のRGBモードだけでなくLabモードも使いこなせるようになると色々と便利です。
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